野口英世と細菌検査室、一号停留所など長浜検疫所に関する展示活動
- 「金沢区の宝“旧長浜検疫所一号停留所” が解体・跡地売却の危機に」(2020(令和2).8.31~9.11)
- 場所: 庁舎展示スペース(金沢区役所1階エレベーターホール前)
- 内容: 横浜市金沢区長浜の横浜検疫所輸入食品検疫・検査センター敷地内の奥まった高台に、1895(明治28)年創建、国の登録有形文化財(建造物)がある。「横浜検疫所検疫資料館」すなわち、かつての「長浜検疫所一号停留所」である。現在、一般に公開されるのは一年に一度しかない。昨年11月の公開日には多くの見学者が訪れた。
停留所とは聞きなれない名称だが、感染症の疑いのある者が一時的に留め置かれる場所のことである。当時は海外から日本の港に入港しようとした船に法律で定められた感染症の患者あるいは疑いのある者がいた場合、検疫所は船の入港にまず「待った」をかける。患者あるいは疑いのある者は検疫所内の病院へ、それ以外の者は停留所または本船に一定の間とどまり、感染していないことを確認後、はじめて入国が許される。
一号停留所は上等船客用の停留施設として一定期間の健康観察の役割を持ついわばホテルで、その他の船客用の二号停留所もあったが、現在は、一号停留所のみが残されている。
一号停留所の建物内に一歩入ると、サンルームのような開放感のある廊下、明るい個室、広い談話室そして選ばれた調度品の数々がある食堂など、外観からはうかがい知れない重厚な造りに見学者は驚かされる。
日本はなぜ、この様な立派な検疫施設を造ったのか。それは、日本のおかれた情況からうかがい知ることができる。当時の日本は、治外法権などの不平等条約に苦しみ、外国船に対しても検疫をすることが許されていなかった。明治政府は、この解決に向け、検疫施設を用意し、新しい条約に備えたわけである。
1899(明治32)年に新通商条約が諸外国との間で施行となり、念願の外国船も平等に適用する検疫制度がスタートするが、なんと、この制度に基づいて検疫を始めてすぐ、横浜はいわゆる「ペスト騒動」の舞台となった。この騒動については当会の資料に詳細があるのでご覧いただきたい。
検疫所はこの事態に適確に対処し、国内に入れば都市の半分の方が亡くなると言われているペストを水際で防いだ。当然、この事は諸外国を驚かせ、 高く評価されたことは言うまでもない。この時に任官間もない野口英世が騒動の発端となった「来航船内で病に苦しむ船員の血液検査でペスト菌を発見」という活躍をした。
数々の歴史が刻まれた一号停留所であるが、今、その存続に注目が集まっている。現在、横浜検疫所輸入食品・検疫検査センターは日々検査業務に当たられているが、2022(令和4)年度末には横浜中心部である「みなとみらい」地区に移ることが決定され、すでに準備が進められている。
いっぽう移転後に残される建物と土地の処分いついてはいまだに未定とされていることから、一号停留所は今まさに解体の危機に瀕していると言える。一号停留所はどうなるのか。
NPO法人野口英世よこはま顕彰会は、この地に残して、検疫遺産として永く保存して欲しいと願っている。そのために、この一号停留所の存在をより多くの方に知っていただき、更に保存に向けてのご意見を伺うため、パネル展を開催している。
本パネル展では、今回も多くの方が足を止め、耳を傾けてくださった。一号停留所の存在をご存じない方も多く、お住まいの近くにこのような歴史的建造物があることにまず驚かれている。検疫所という場所柄、一般の人が敷地内に入ることができないのは当然で、知る方は少ない。今年の一般公開は叶わないが、以前見学された方々はその重要性を認識され、毎年足を運ばれている方もおられる。
長浜検疫所のもうひとつの歴史的建造物が隣接地にある。旧細菌検査室である。ここで若き野口英世を含む多くの検疫医官や細菌検査技師らが病原体の検索に心血を注いだ。海外の未知の病原体を疑いつつ、自身への感染を防ぎながら、時間的制約のある中で答えを出す難しさ。それをこの小さな検査室と設備の中で行ったかと思うとただただ頭が下がる。細菌検査室に展示されている写真ではわからない現実に想像をめぐらせる。パネル展に足を止めてくださった方の多くが旧細菌検査室を訪れたことがあり、この思いを共有できたのは楽しいことだった。
今こうして、旧細菌検査室を常時見学できるのは、小暮葉満子氏を中心とした18年におよぶ市民による保存運動の成果である。海外の情報が少ない時代に水際で国民を守った多くの方々。その偉業を目に見える形で後世に伝えた市民の方々。またその思いを受け止め、管理を引き受けた横浜市。よくぞ残してくださったと有難く思う。
いっぽう横浜検疫所輸入食品・検疫検査センターの移転により、その行方が案じられる一号停留所。日本の検疫制度スタート時から変わることなく同じ場所に佇む建物に健気さすら感じる。何とかこの地に保存されて、国の威信をかけて建設されたという建物と内部の資料を、 後の人にも見せてあげて欲しいと切に思う。
今年、世界を揺るがせている新型コロナウイルスもしかり、歴史を遡れば人々は幾多の病原体と対峙してきた。いつの時代も、日本と世界の人々を守ってきた検疫に敬意を表すと共に、パネル展へお立ち寄りくださった多くの方といつもご協力をいただいている金沢区役所に感謝申し上げます。
- 「細菌検査室と野口英世 そして と長浜(横浜)検疫所」(2017(平成29).3.18)
- 場所: 金沢区役所 1階 1号会議室
- 内容: フォーラム KANAZAWA2017への参加。このフォーラムは金沢区生涯学習交流会主催・金沢区役所共催で、団体・個人(街の先生)が出展参加する恒例事業。今年度は新築された金沢区役所で実施。40を超える団体・個人が展示や実演で参加。当会は1階の1号会議室にブースを与えられ、パネル展示を行い、前面の長机上に資料を配置し、来客に対面説明を行った。
- 「野口英世と横浜(長浜)検疫所」(2016(平成28).11.6)
- 場所: 長浜ホール 地下1階 ホワイエ
- 「野口英世博士帰国100年記念 帰国時の横浜における足跡と風景を辿る」(2015(平成27).9.5)
- 場所: 長浜ホール 地下1階 ホワイエ
- 展示出品 (2013(平成25).5.10~19)
- 場所: 横浜みなと博物館特別展示室
- 内容: 北里研究所と野口英世記念会が主催の「野口英世と北里柴三郎」展に「協力」の形で参加。師弟に当る 2人の展示が一同に会される珍しい展示会であり、当会は 2008年横浜開港 150周年記念・金沢区制 60周年記念事業で制作した「明治 30年代の金沢・長浜立体地図(ジオラマ )」を展示して協力。
- パネル展 (2013(平成25).3.10)
- 場所: 金沢区能見台地区センター
- 内容: フォーラム KANAZAWA2013への参加。このフォーラムは金沢区生涯学習交流会主催、金沢区役所共催で、団体・個人(街の先生)が出展参加する恒例事業。この年度から金沢区に登録の全団体も参加資格を得られ、当会としては初めての参加。 70を超える団体・個人が参加。
当会は体育館内に幅 1,800㎝のブースを与えられ、幅 1,800㎝、高さ 900㎝の白板にパネル展示を行い、前面の幅 1,800㎝の長机上に資料を配置し、また来客と対面説明する。好天に恵まれ、参観者も多数あったが、当会ブースへの立寄りは 60名であり、当日1名の入会申込者があった。このようなイベントへの参加は知名度向上につながるものと期待される。
- パネル展「野口英世、金沢区長浜から世界へ飛び立つ!」(2012(平成24).10.9~15)
- 場所: 金沢区民活動センターホール
- 内容: 金沢区民活動センター 5周年記念事業「ゆめかもんパネル展」に参加。野口英世の生涯、野口英世アフリカ賞、 検査室保存運動、当会の活動状況をコンパクトに纏めたパネルを展示。
- 「野口英世パネル展」(2010(平成 22).12. 22~ 27)
- 場所: 磯子区民文化センター杉田劇場ギャラリー
- 内容: 「せかいの子どもたち展」に参加
- 「野口英世パネル展」(2010(平成22).10.13~17)
- 場所: 金沢地区センター体育館
- 内容: 第 22回金沢区民文化祭への参加
- 「野口英世パネル展」(2008(平成 20).11.9~12.14)
- 場所: 八景島内客船ターミナル
- 「野口英世と横浜」(2008(平成20).7.21~8.1)
- 場所: 金沢区役所区民活動センター展示コーナー